社員の健康管理は会社の責任

長時間労働などの悪習慣がなかなか改善されず、うつなどのメンタルヘルス不調の増加などの問題視されています。

政府も働き改革と銘打って、様々な啓蒙活動や取り組みを行なっています。

社員をはじめとするすべての従業員の健康は、個人のためだけではなく、企業にとっても重要な課題です。

今までは従業員の健康管理は、個人が行うという風潮がありましたが、現代では企業が従業員の健康管理も行うことが当たり前になっています。

その理由や、取り組みの紹介などをご紹介していきます。

企業が社員の健康管理を行う理由

まずは法律の上の観点からお話します。

労働契約に関する基本的な事項を定めた労働契約法(平成20年3月施行)の第5条には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と記されています。

これは企業の「安全配慮義務」を規定しているものですが、「身体等の安全」には心身の健康も含まれるとされます。

労働契約法に罰則規定はありませんが、

安全配慮義務を怠った企業には多額の損害賠償を命ずる判例が存在します


労働者の安全と衛生についての基準を定めた労働安全衛生法や裁判例を見ても、企業はディフェンスの面でも労働者の健康管理を行うべきものとみなされています。

また、社員が健康を害して仕事に支障が出れば、組織としての労働生産性が低下します。


さらに社員の健康管理をないがしろにしていることが外部に知られれば企業イメージも悪く見られます。
社員の健康管理は会社の利益と直結した問題だと言えます。

SNSやインターネットの普及により、この様な労働時間や環境はすぐに拡散されるので特に注意が必要です。

2008年に施行された労働契約法で、「企業は従業員に対して生命や身体の安全を確保しながら働けるように配慮する義務がある」ということが明文化されました。

上記のように使用者が雇用者に対して生命、身体の危険から保護するための環境を用意しなくてはいけないことを

「安全配慮義務」と言います。

それまでも判例上では、使用者は雇用者に対する「安全配慮義務」があるとされていましたが、法律上明文としての明確な根拠はありませんでした。

これを、当然に必要な義務として明文化したのが2008年施行の労働契約法です。

労働契約法自体に罰則規定はありませんが、労働契約法施行以前から今日にいたるまで、安全配慮義務を怠った事によるトラブルや訴訟について、企業への損害賠償を命じる判決が多数存在しています。

また労働安全衛生法では生命や身体の保護だけでなく、社員にとって快適な職場環境作りを積極的に行うことも求められています。

安全配慮義務とは

安全配慮義務を守るために押さえておくべき、具体的な内容をご紹介していきます。

適性労働条件措置義務

過重労働が原因となって心身の健康を害さないために、労働時間や休憩・休日、休憩場所、人員配置などの労働条件を適正に保つ義務です。

昨今、過重労働による過労死や過労自殺が社会問題となっているように、適正な労働時間を管理することは企業にとって最も配慮すべきことの一つと言えます。

従業員自身が過重労働に対して問題ないと考えている場合でも、企業側で適切な労働時間を管理する必要があります。

日本だけでなく、タイなどの海外駐在員において労働時間が長くなる傾向にあります。

健康管理義務

必要に応じて健康診断やメンタルヘルス対策を行い、労働者の心身の健康状態の把握と健康管理に努める義務です。

労働安全衛生法では、労働者を雇い入れた時の健康診断、1年に1回の定期健康診断や特定業務従事者(深夜業や身体に有害な物の取り扱いや有害な環境での従事者)への特定業務従事者健診を義務付けています。

ただ単に健康診断を実施するだけではなく、健康診断の結果が出た後についても、企業は従業員に対して適切な処置をとる必要があります。

この健康診断後のアフターフォローを行わない企業が多く見られます。

健康診断をとりあえず受けただけで、大事なのはその後「どの様な対策を打てるか」がとても重要です。

適性労働義務

労働者の病歴、持病、体調状態などを考慮した業務配置を行う義務です。

従業員が業務によって心身の不調を訴えた場合や持病がある場合にもかかわらず、企業がそれに対する対応を怠った場合には安全配慮義務違反になることがあります。

適切な業務配分を行う他に、今現在健康な従業員でも急な身体不良を起こす可能性もあるため、もしもの際に適切な対応ができるような体制を整えておくことも重要です。

看護・治療義務

病気やケガをした場合に適切な看護や治療を行う義務です。

従業員が業務によってケガをしたり精神障害を発症した場合に、企業が適切な看護や治療を行うのはもちろんですが、「発症した可能性」がある場合にも対応する必要があります。

日頃から従業員とコミュニケーションを取り、少しでも異変があった場合には病院で受診をしてもらいましょう。

かかりつけ医のように、企業でもコミュニケーションを普段から取れている産業医や相談できるサービスを用いるのも一つです。

健康経営
〜社員の健康管理も経営のうち〜

会社において社員が活躍するためには、仕事内容が優れている前に、健康であることが大前提です

アスリートは体が資本と言います。

しかし、これはアスリートのみならずビジネスマン全般に言えることです。

社員が健康であるからこそ高品質の商品やサービスを提供することができ、それが顧客満足度の向上やひいては会社の成長にもつながります。

これからはビジネスパフォーマンスを向上させる為に、健康を意識する必要があるでしょう。。

また、体調不良や疲労が蓄積した状態での業務はミスや事故など重大なトラブルを引き起こしてしまうという、経営リスクの可能性もあります。

病気やメンタルの不調が原因で社員が退職してしまった場合、その後の採用や教育といったコストも発生してしまいます。

「法律で決まっているからやらなければならない」というだけではなく、生産性や顧客満足度を上げ、経営リスクやコスト発生の可能性を抑えるためにも社員の健康管理は重要です。

このような、社員の健康管理が企業の経営にも大きな成果をもたらすという「健康経営」の考え方が近年、様々な企業で取り入れられています。

健康経営についての詳細は以下の記事をご覧ください。

社員の健康管理のために企業は何をすれば良いのか

社員の健康管理とは、社員が病気になったときに何か対策すれば良いというものではありません。

健康が損なわれないようできる限りの予防策を講じる必要があります。

この事後対処では無く、事前に予想されることを防止、予防する事が企業にとってはとても重要です。

社員のフィジカルとメンタルの健康を維持するために実施しなければならないこと、実施すると良いことの具体的にご紹介します。

企業が行える従業員の健康管理の取り組み

既に多くの会社で社員の健康管理をするための様々な取り組みが進められています。

様々な企業で実際に行われている取り組みをいくつかご紹介します。

1.健康診断の実施

この健康診断は取り組んでいる企業は多いはずです。

健康診断は労働安全衛生法で定められた義務であり、労働者全員が受けなければなりません。

「常時使用する労働者」に対しては雇用した際に「雇入時の健康診断」と、年に1回の「定期健康診断」を実施します。

常時使用する労働者とは、「1年以上使用する予定で、週の労働時間が正社員の4分の3以上」である者で、パートやアルバイトも含まれます。

タイの企業においても健康診断は比較的に行われています。

しかし、健康診断後のフォローまではなされていない事が多く見られます。。

2.長時間労働の改善

労働基準法36条に基づく時間外労働に関する労使協定、いわゆる36協定に違反している場合は直ちに改善する必要があります。

企業は法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働を命じる場合、労組などと書面による協定を結んで労働基準監督署に届け出なければなりません。

違反すれば6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

これに関しては日本ではようやく厳しくなっていますが、海外での駐在員に関しては当てはまらないケースも見られる為に、今後改善する必要がある企業もいるのではないでしょうか。

3.ストレスチェック

労働安全衛生法の一部改正を受けて、2015年12月から労働者が50人以上いる事業所では毎年1回、ストレスチェックを実施することが義務づけられています。
それ未満の場合でも努力義務となっており、実施が望ましいです。

ストレスチェックは、ストレスに関する質問票に労働者が記入して提出することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べられる検査です。

メンタルヘルス不調を予防するにはまず個人が自分自身のストレス状態に気づき、セルフケアを行うことが必要だとされています。ストレスチェック制度はこの1次予防のために導入されています。

近年は、メンタルヘルスによる体調不良や退職を余儀なくされているケースが増加しています。

今後、特に企業による健康管理の中でも重要な鍵になるのは、このメンタルヘルスに関してになると予想されています。

仕事熱心な人ほど、自分の疲労に気づかずに働いており、疲労が蓄積しているケースがあります。

客観的に見る為にも、疲労度チェックなどを行う様にしてみてください。

4.ヘルスリテラシーの向上

ヘルスリテラシーとは健康に関する情報を入手して理解し、効果的に活用するための意欲や能力のことです。

社員のヘルスリテラシーの向上を促すには、メンタルヘルスや生活習慣病関連の知識の提供や改善指導を行う研修・社内講習、相談窓口の設置、専門家による面談などを実施すると良いでしょう。

社員に関して健康意識を向上させる為のセミナーはとても有効です。

また、ストレスなどによるメンタルによる悩みを社内の人に相談しにくいと言ったケースも多くみられます。

そのような場合は第3者による相談窓口の設置をアウトソーシングするのも有効です。

5.福利厚生の充実

社員の健康への関心を高め、また健康増進にもつながる支援として福利厚生の充実にも取り組みたいところです。

具体例としては、社内スポーツクラブ(部活動)の設置、マッサージルームやジムルームの常設または施設の優待利用、体を動かすイベントの開催などが挙げられます。

福利厚生アウトソーシングなどを利用することで比較的取り入れやすい取り組みでもあります。

福利厚生の充実は体調管理だけではなく、社員の満足度にも繋がるポイントになりますので、社員の健康管理で何をして良いか困った場合には、福利厚生アウトソーシングなどに相談すると良いでしょう。

6.その他の例

  • 社員食堂で栄養バランスの良い食事を提供する
  • スポーツデイや家族との交流イベント        など

社員の健康管理は法令遵守にとどまらない企業の課題と言えます。

健康管理への投資はすぐには目に見える成果を得られないようにも思えますが、実際には多くのメリットがあり、近年では戦略的に取り組む企業が増えています。

企業として実施すべきことは徹底して行い、さらに独自の施策を探してみてはいかがでしょうか。

増田勇樹
MSD LABO Co.,Ltd
代表取締役

【資格】
理学療法士
健康経営アドバイザー
ルーシーダットンインストラクター

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